みず風呂

みずいしのブログです

百合が苦手だった私がやがて佐伯沙弥香に憧れるまでの話

f:id:narumizuishi:20201121234629j:plain

昔からずっと女性同士の恋愛物(=百合作品)が苦手だった私が百合作品「やがて君になる」に出会い、ついには登場人物の一人である佐伯沙弥香に憧れの感情を抱くに至った話です。

やがて君になる」のネタバレはなるべく避けてるので誰でもどうぞ。

私は百合が苦手だった

苦手になった理由はわからないんですが、ずっと昔から苦手意識があった。たぶん肌に合わない百合作品を一度読んで、それ以降は苦手意識から避けるようにしてきた。実際、読んだことのある百合作品はほとんど無い。

舞台「やがて君になる」を観た

きっかけは2019年某日、友人に舞台「やがて君になる」に誘われた事。私は情弱なので、当時「やがて君になる」という作品の事は1ミリも知らなかったのですが、声優の礒部花凜さんと小泉萌香さんが出演すると聞いて、行きま~す!と即答してた。
声優さん目当てでイベントに行くタイプの人種なので。

舞台終演後、私はめちゃくちゃ感動して泣いていた。

ストーリーは主人公の女の子:小糸侑(こいとゆう)が生徒会役員の先輩:七海燈子(ななみとうこ)に告白され、徐々に惹かれていくという話。他の百合作品を全然知らないので比較は出来ないのですが、筋書だけなら恐らくオーソドックスな百合作品だと思います。

「あれ…俺、百合が苦手じゃなかったっけ…???」と泣いている自分自身に驚きつつ、めちゃくちゃ良かったという感情は確かなものだったので、劇場を出るときに1週間後の公演チケットをその場で買い、帰ってから原作漫画の電子書籍を買って一気読みし、もう1回公演を見に行った。2回目もハチャメチャに感動して泣いた。

百合作品における男性傍観者の存在

私はどんな作品でも共通して、登場人物の誰かに「感情移入」して楽しむタイプだ。感情移入する人物は主人公でもライバルでも誰でもいい、作品中の誰かになりきって楽しむ。逆に言えば、感情移入できない作品が苦手で楽しめないタイプだ。

私が百合を苦手としている理由は、恐らくそこにあったのだと思う。

百合作品は当然「同性を愛する女性」のお話で、私は「同性を愛する女性」に感情移入ができず、百合作品を楽しめなかったのだ。だから百合が苦手だと勘違いしていたが、本当は感情移入できない作品が苦手なだけで、百合が苦手なわけではなかったのだと思う。

やがて君になる」には槙聖司(まきせいじ)という男の子が登場する。彼は自分の恋愛には興味がなく他人の恋愛を見守るのが趣味という極めて変な奴なのだが、作品を見ているとすぐに気付く。彼は私なのだ。

1ミリも知らない作品の舞台を声優さん目当てで見に行った私にとって、人の恋愛を「傍観者」として眺めることを楽しんでいる槙聖司くんに、親近感を感じずにはいられなかった。

つまり、私は槙聖司くんに感情移入することで「やがて君になる」という作品を楽しむことができた。

槙聖司くんのような「傍観者」の存在って、あらゆる作品にとってめちゃくちゃ重要だと思う。特に(こういう表現は相応しくないかもしれないが)少し変わったテーマを取り扱う作品において、登場人物に感情移入しづらいor感情移入できない人が作品に入り込めないという問題を、「あなたは傍観者としてこの作品に入ってきて良いんですよ」という依り代を用意することで解決しているのだ。

舞台「やがて君になる 佐伯沙弥香について」を観た

本作は「やが君」の外伝で、七海燈子と同じ生徒会役員の佐伯沙弥香(さえきさやか)にスポットを当てた作品。佐伯沙弥香は同性の七海燈子に一目惚れするが、想いを伝えることはできない、そんな中で小糸侑がやってきて…と「やが君」のストーリーを別の視点から楽しめる。

私は佐伯沙弥香になりたいと思った。

前述のとおり、私は「同性を愛する女性」に感情移入しづらいので、佐伯沙弥香の気持ちが分かるとは言えないし、実際自分は佐伯沙弥香みたいな人間では無い。でも、七海燈子に一目惚れし、意識して、恋をする佐伯沙弥香がとても美しくて憧れを抱いたのだ。

やがて君になる」で槙聖司くんという「傍観者」として存在していた私が、

やがて君になる 佐伯沙弥香について」で佐伯沙弥香という「恋する女性」に憧れるようになった。

槙聖司くんは作中で「僕には恋はわからない」と言い、私も当時はすごく共感していたんですが、私が「恋する女性」に憧れを抱くってことは、もしかして私は恋を知りたいのか…?それとも恋する佐伯沙弥香の「美しさ」に対する純粋な憧れなのか…?と、自分の気持ちがよく分からなくなってしまった。この憧れの気持ちに対する整理はまだついていない。

私は百合が苦手ではなかった

先に書いてしまったけど、私の百合作品に対する苦手意識って「感情移入できる人物がいない」ことに対する苦手意識であって、百合表現自体に対する気持ではなかった。他の人が同じように感じるかどうかわからないけど、もし同じように百合作品に苦手意識を持っている人が居たら、一度「やがて君になる」を読んでみてほしい。登場人物の描写がサブキャラクター含めて非常に細やかで、一人一人が確実に生きていると実感できる鮮度の高い作品です。舞台のリバイバル公演も計画されているらしいので、また観られるといいな。

現場からは以上です。

やがて君になる(1) (電撃コミックスNEXT)

やがて君になる(1) (電撃コミックスNEXT)